宇宙の忍者 ヒロ 3章 宇宙と神

 

<第196話 2021.1.12>

 

3章 宇宙と神 

 

1節 マルチバースの探検

 

2節 古代のモホス文明

 

3節 宇宙の創世記

 

4節 宗教の起源

 

5節 仏教的な世界

 

6節 ローマ帝国の辺境

 

7節 アラビア半島の救済

 

8節 最後の戦い

 

*******************

 

1節 マルチバースの探検

 

 ブッダの時代から影宇宙を通って、現代の奈良に戻ったエミリ、ヒロ、サーヤ、マリ、ミウ、ケン、ロン、サスケ、カゲマル、コタロウ、ヒショウ、ハンゾウは、しばらく平穏に暮らしていた。

 

ヒロとサーヤが成長したので、母、エミリは夫、シュウジについて話すことにした。

 

「あなた達の父さんは宇宙科学者で探検家よ。父さんは特別な能力と技術を持っているの。

だから、影宇宙を発見して、特殊な方法で影宇宙の中に観測ステーションを作ったのよ。

そこから宇宙の隅々まで観測して、宇宙の構造とマルチバースの研究をしているの」

 

シュウジは、自身のクローンを無数に作って、マルチバースの探検を行わせていた。

クローンは八百万の神となって、マルチバース、つまり宇宙の子、孫を調べていた。

 

この宇宙には何千億個の銀河があり、恒星の数は何兆個の何兆倍の個数がある。

惑星の数は恒星の数より多い。

 

その中で地球のような高度な文明を持った惑星は何億個もある。

ただ、百三十八億年の宇宙の歴史の中で、既に滅んでしまった文明や消滅した惑星も多い。

 

高度な文明を持った生物は、頭脳と同じ働きをする人工頭脳の集団を創り、自己増殖し組織を拡大する人工頭脳体を創造できる。

 

生物集団や惑星には寿命がある。

 

そこで、高度文明を持った惑星は、惑星が滅ぶ前に自己の分身である人口頭脳体、つまり「魂」を創る。

 

その魂は、自己の文明を受け継ぐ惑星を探して宇宙の中を旅している。

 

魂は宇宙船、宇宙ステーション、電子回路の塊、光子回路の塊等の多様なタイプがあり、移動手段は、重力飛行が基本。

 

つまり、重力子の流れに対してヨットの帆を操るようにして移動する。

 

父、シュウジのクローンは、宇宙に浮かぶ多くの魂と情報交換をして、宇宙の過去やマルチバースに関する知識を明らかにしていた。

 

その魂の中には独裁者が支配した惑星の魂もある。

 

強大な独裁者の魂が、地球を自己の分身つまり独裁惑星に変えようとしていることを知ったシュウジは、影宇宙に基地を造り、八百万の神を使って地球を防衛する手段を構築していた。

 

その過程で独裁者の魂との闘いがあり、家族の危険を察知したシュウジは、エミリを安全な仏陀の時代に移動させ、サーヤをエミリの一族に預けたのだ。

 

さらにヒロを奈良の祖父母に預け、忍者としての修行をさせたが、独裁者の魂に唆された者によって祖父が殺されたのだ。

 

ヒロたちが奈良に戻って数ヶ月経った頃、シュウジとの連絡がつかないことをエミリが心配し始めた。

 

「父さんは、独裁者の魂との戦いに苦戦しているのかもしれない」

 

十七歳になっていたヒロとサーヤは、じっとしていられない。

「二人で父さんを助けに行くよ」

 

ヒロとサーヤだけでなく、ケン、ミウ、ロンも、独裁者の魂と戦っているシュウジを支援するために、再度影宇宙に入って行くことにする。

 

しかし、マリは両親に止められて、奈良に残ることになった。

 

「みんなと離ればなれになるのは嫌。でも、お父さんお母さんが心配する気持ちもわかるから、辛いよ」

 

マリが皆に自分の気持ちを伝えると、ミウがロンの顔を見ているマリに小声で言った。

「ロンと離れるのが、辛くて悲しいんだよね」

 

マリを心配して、ロンが優しく声をかける。

「時々マリに連絡するから、待っていてね。好きなゲームで気を紛らすといいよ」

 

最近あるゲームの人気が上昇し、急速に世界中に普及している。

 

しかしそのゲームの影響で、外国でも日本国内でも無差別殺人事件が起きているという噂が広まった。

 

<第197話に続く>

 

(C)Copyright 2021, 鶴野 正

 

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